最近国民をほったらかしにして自分の利益と名声だけのために頑張っている方々のニュースが報道されるたびに悲しくなります。
もっと被災地の現状や必要な物資の情報もしっかり伝えないとあっという間に「過去のこと」になっちゃうんですけどね。
そんな悲しい思いを胸にとどめながらこの小説を読むと「まあ現在も昔も変わんないもんなあ」と諦めに近い思いにふけってしまいます。
今回は垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」です。文庫で上下巻あわせると結構な長さになりますが、息つく間もない展開に
一気読みです。最高のハードボイルドエンターテイメントって書くと軽いですが、読み応え十分な作品です。
この作品を読むまで戦後の日本国政府が行ったブラジルなどへの移民政策(棄民政策)について僕は全然知りませんでした。
また僕の勝手な思い込みですが、垣根氏が心の中で日本国民に知っておいて欲しい日本の過去の酷い政策のひとつを「小説」という表現方法で伝えたかったのかなあ、
と感じました。だからなんですが、読みながら怒りがこみ上げてきます(でも面白いんですよ)。沢井 鯨氏の「P.I.P」を読んだ人なら分かるかと思いますが、
まさしくあんな感じです。
たった60年ほど前です。人口を減らすためにとられた「移民政策」で夢と希望を胸に抱いてブラジルに移住した日本人達が、夢も希望も踏みにじられ、それでも頑張って、
けれどむなしく病死したり、自然災害に遭ったりでボロボロになります。そして、すべての希望も絶たれて残った人達に残ったものは「復讐」の感情です。
第一章でそのあまりに酷い事実を読んでいるうちに、怒りと悲しみがメラメラです。そして復讐までのジェットコースターのようなストーリー展開に続き、
「おいおいおいおいおいおいおいおい」になって、かわいいエピローグですっきりです。とは書いてますが、最初に書いた「現在も昔も変わんないなあ」って考えると
なんだか「あーあ」になります。
とまあ、こんな紹介じゃわかんないでしょう(笑)。あらすじは適当にググってください。
ただひとつ言っとくと、垣根さんは上手いんです。上がったり下がったり、成功と挫折がストーリーの気持ちよいところに入っているのでダレたり飽きたりしません。
興味深い題材と強力なキャラクターのハーモニーに加えて、エロと車とマシンガンと明るい友情のカルテットです。
デビュー作の「午前3時のルースター」からいきなり上手いんです。思わず次が気になってしまうので止まりません。「じゃあ今日はここまで」にならないんですよね。
そして垣根さんはジャンルで分けるとハードボイルドかと思ってたんですが、これがまた「君たちに明日はない」シリーズで全然イメージが変わりました。現在3部作になってまして
どれも外しませんが、もし興味があるのなら絶対にシリーズ第一部「君たちに明日はない」から読むことをおススメします(絶対絶対)。
消費税増税に反対しながら必要のない道路を増税した消費税で作るのに賛成するって違和感ないんですかね?
ではでは